−すて(sute)−
・捨て石(すていし) 1.囲碁で、より以上の利益を得るために作戦としてわざと相手に取らせる石。2.道ばたや、野や山に転がっている、誰も顧(かえり)みない岩石。また、採掘などの際に捨てられる無価値な鉱石。類:●ぼた 3.現在の効果がなく、無駄なように見えるが、将来の利益を見込んでする投資や予備的行為。 例:「お家再興の捨て石となる」
・素敵滅法(すてきめっぽう) 素敵を強めていう言葉。ここでの「素敵」は、程度が甚だしいことの意味。 類:●滅法●度外れた 「素敵」の用例:滑・浮世風呂−前「すてきに可愛がるから能(いい)」
・捨て子は世に出る(すてたこはよにでる) 親に捨てられた子は、苦労して育つから逞(たくま)しくなり、成功する人が多い。
・酢で割いて飲む(すでさいてのむ) 1.魚を割いて酢漬けにして飲むように食べるということで、容易なこと。安易なこと。2.一々欠点を挙げ立てること。 用例:浄・卯月の潤色−中「めをとの衆が此の今を酢で割いて飲むやうに、言ひたいがいに言ひこめて」 用例の出典:卯月の潤色(うづきのいろあげ) 浄瑠璃。心中物。近松門左衛門。宝永4年(1707)。「卯月紅葉」の後編になる後追い心中を描いたもの。おかめと心中を図り、助かった与兵衛は、その後に出家。1周忌が近付き、おかめの亡霊と出会った後、書置きを残して剃刀で死ぬ。
・捨て台詞(すてぜりふ) 1.歌舞伎の舞台で、役者が脚本に書いてないことをその場その場に応じて言い捨てる短い台詞。主として、登場、退場のときに言う。 類:●捨て言葉 2.人前を立ち去る時、返事を求めるつもりもなく言う言葉。または、挨拶(あいさつ)。 類:●捨て言葉 3.別れ際に、相手を脅したり、蔑(さげす)んだりする気持ちでいう悪意ある言葉。 例:「弱虫の捨て台詞は決まって『覚えてやがれ』だ」
・捨てたものではない(すてたものではない) まだまだ有望である。まだまだ見限ったものではない。良い所もない訳でもない。
・素手の孫左(すでのまござ)[=孫左衛門(まござえもん)・五六三(ごろさ)] 何も持っていないことを強めていう。また、何も持っていない人。 類:●無一物
・捨て鉢(すてばち)・すてっぱち ものごとが思うようにならなくて、もうどうとでもなれという気持ちになること。また、そのような態度。 類:●投げ遣り●自暴自棄●やけくそ 用例:人情・春色梅児誉美「すてばちをいふわな」 ★「鉢」は、兜の上部を覆う部分で、兜を捨てて己を危険に晒すことからか。
・捨て目捨て耳(すてめすてみみ) 普段から、何げないようなことも目耳に留めておくように心掛けること。目に見えることや耳に入ることにいつも注意を払っておくと、いつか必ず役に立つものだということ。 例:「捨て目捨て耳を利かせる」
・酢でも蒟蒻でも(すでもこんにゃくでも)[=酒塩(さかしお)でも] 下に「いけない」など打消しの語を伴って用いる。一筋縄ではいかない。手に負えない。 類:●どうもこうも●煮ても焼いても●一筋縄ではいかない
・捨てる神あれば拾う神あり(すてるかみあればひろうかみあり)[=引き上げる〜・助ける〜] 世間は広いから様々な人がいて、一方で見捨てられても、他方では助けてくれる人が出てくるものだ。誰かから見限られたからといって、くよくよすることはないということ。
・捨てる子も軒の下(すてるこものきのした) 止むに止まれず捨て子をするときでも、雨露を凌(しの)げる軒下を選ぶのがせめてもの親心である。自分の子供に対する親の愛情が非常に深いことの喩え。
・素手を引く(すでをひく) 何も得るところがない。徒労(とろう)に終わる。
・素手を振る(すでをふる) 何も持たない。何もしない。じっとしている。