−たし(tasi)−
・出し遅れる(だしおくれる) 1.物を出すのにちょうどよい機会をのがす。出すきっかけに遅れる。 用例:滑・浮世床−初「出(ダ)しおくれたる誤証文」 2.言い出すのをためらう。言いそびれる。 用例:浮・好色一代男−六「出しおくれてゐる中に、吉田方より申し出して」 用例の出典:浮世床(うきよどこ) 江戸時代後期の滑稽本。2編5冊。式亭三馬。歌川国直画。文化10年(1813)〜11年刊。社交場としての髪結床に集まる江戸庶民の会話を中心として活写したもの。三馬死後の文政6年(1823)、滝亭鯉丈(りゅうていりじょう)が、渓斎英泉画で第3編3冊を発表。
・出し惜しむ(だしおしむ)・出し惜しみする 出すことを惜しむ。けちで、なかなか物を出さないこと。
・多士済々(たしせいせい・さいさい) 《四熟》 「済々」は多くて盛んなこと。優れた人が大勢いること。 例:「多士済々の教授陣」
・たじたじ 1.足元が定まらないでよろめいて歩く様子。 類:●よろよろ 用例:浄・神霊矢口渡−三「深手に弱る足たぢたぢ」 2.困難に直面したり、相手に威圧されたりして尻込みする様子。挫(くじ)けて怯(ひる)む様子。 例:「相手の威勢にたじたじとなる」
・多事多端(たじたたん) 《四熟》 仕事や処理すべき事が多く、忙しいこと。 類:●多事多忙 ★「端」は物事の始めの意で、「多端」は仕事が多く忙しいさまをいう<新明解四字熟語辞典(三)>
・多事多難(たじたなん) 《四熟》 事件や困難、また災難が多く起こること。 類:●多事多患 反:■平穏無事
・他事ない(たじない) 1.一つのことに熱中して他のことを顧(かえり)みない。 類:●余念がない 用例:宇治拾遺−一二・一「ただ囲碁を打ほかは他事なし」 2.親しい。打ち解けている。 類:●隔意ない 用例:浄・頼光跡目論−二「たじなき体に見へけれども」 用例の出典@:宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり) 鎌倉初期の説話集。15巻。作者不明。建保年間の成立という。貴族説話、仏教説話、民間説話など約200編を収める。中世初期の人々の生活感情をよく伝える。文体は当時の口語を含む和文。 用例の出典A:頼光跡目論(らいこうあとめろん) 金平浄瑠璃(金平=頼光四天王のひとり坂田金時の息子)。岡清兵衛。寛文3年(1663)頃か。重病の将軍源頼光(よりみつ)の跡目相続を議論の末次男としたが、これを不服とする長男が叛逆するので、頼光が四天王をして長男を討(う)たせる。
・他事ながら(たじながら) あなたには関係ないことですが、の意味。手紙で、自分のことを述べるときに用いる。 例:「他事ながら御安心ください」
・出汁に使う(だしにつかう)[=する] 出し汁として用いるという意味から、自分の目的を果たすための方便・方法として他人を利用すること。 類:●口実にする
・出し抜く(だしぬく) 1.他人の隙(すき)に乗(じょう)じたり、騙(だま)したりして、自分だけが先に利益を納(おさ)める。 類:●鼻毛を抜く●裏をかく 例:「警察を出し抜く」 2.約束を破って無断で先にものごとをする。 用例:金刀比羅本保元−中「義朝はだしぬきけるよな」 例:「みんなを出し抜いて結婚する」
・蛇首を見て長短を知る(だしゅをみてちょうたんをしる) 蛇の長さを知るのに、その頭がどのくらいの高さまで上がるかを見て推(お)し量(はか)る。ものごとの一部を見て、その全体を推察することの喩え。 類:●一斑を見て全豹を卜す●You
may know the lion by its claw.(爪によってライオンであることを知る) 出典:「淮南子−氾論訓」「故蛇拳首尺、而脩短可知也」
・多情多恨(たじょうたこん) 《四熟》 1.愛情が深まれば、またそれだけ後悔や恨み心も深いという意味で、ものごとに敏感に反応する移り気な者は、また、自ずから恨みの心情も多いということ。 2.小説。尾崎紅葉。→「多情多恨」
・多生の縁(たしょうのえん) 多くの生を経る間に結ばれた因縁。前世からの縁。 例:「袖振り合うも多生の縁」 ★誤りではあるが、「他生の縁」とも書く。
・たじろぐ 「たじたじ」の「たじ」と同源。 1.ある水準から後退したり、衰えたりする。衰微して駄目になる。劣る。 用例:宇津保−俊蔭「ふみの道はすこしたちろくとも」 2.衰えて傾く。また、多く打ち消しの形で、重い物あるいは固い物が少し動くことをもいう。 用例:月詣−七「風ふかばかかるまがきもたしろきて」 3.前から押されたり、自ら動謡したりして、後退したり、よろめいたりする。また、困難や予期しないことにぶつかって困惑する。 類:●怯(ひる)む 例:「相手の勢いにたじろぐ」 用例:幸若・本能寺「散々に討退け、嗷(タジロク)処について出」 ★室町時代ごろまで「たじろく・たぢろく」<国語大辞典(小)> 参考:幸若舞(こうわかまい) 大成者と伝えられる桃井直詮(もものいなおあきら)の幼名幸若丸から付けられた。室町中期から末期にかけて流行した簡単な動作を伴う語り物。単に「舞(まい)」ともいい、その詞章を集めたものを「舞の本」、演者を「舞(まい)まい」という。軍記物語に題材をとり、戦国時代の武将に愛好された。曲舞(くせまい)の系統に属する。現在は、僅かに福岡県山門郡瀬高町大江に残る。役柄や扮装はなく、三人の語り手が烏帽子、素襖(すおう)、長裃(ながかみしも)姿で小鼓を伴奏に演じる。「幸若」。 用例の出典:本能寺(ほんのうじ) 幸若。・・・調査中。