−たち(tati)−
・立ち居の人(たちいのひと) 周囲の大勢の人たち。 用例:虎明本狂言・鱸庖丁「立居の人に笑はれ給ふな」 用例の出典:鱸庖丁(すずきぼうちょう・すすきぼうちょう) 狂言。各流。鯉を買うことを忘れ、獺(かわうそ)に食べられたと嘘を吐(つ)く甥(おい)への仕返しに、伯父は鱸をご馳走すると言ってその料理法を長々と語った後、鱸は北条(庖丁)という虫が食べたと言う。
・立ち居振舞い(たちいふるまい) 立ったり座ったりするような日常の動作での身のこなし。身体の動かし方。挙動。 類:●起居動作●立ち振る舞い
・立ち入る(たちいる) 1.その中へ入る。 用例:平家−灌頂「建礼門院は、東山の麓、吉田の辺なる所にぞ立ちいらせ給ひける」 2.深く関わり合う。ある事に関係する。携(たずさ)わる。また、干渉する。 例:「私生活に立ち入る」 用例:評判・難波物語「すべて賢愚貧富をわかたず、たちいる程のやぼすけは」
・立ち臼に菰(たちうすにこも) 背が低く太った女が帯を締めた不恰好な様子を揶揄(やゆ)する言葉。 用例:狂・縄綯「後姿を見ましてござれば、そのまま立臼へ菰を巻いた様ななりで」
・立ち臼も二階へ登る(たちうすもにかいへのぼる) あるはずがないと思われることが起こることの喩え。 用例:洒・辰巳之園「諺に云ふ、立臼も二階へのぼるの道理なり」
・太刀打ちができない(たちうちができない) 相手が強くて太刀でまともに勝負することが出来ない。戦いや競争で、全く勝ち目がない相手に向かったときの様子。
・太刀打ちの技(たちうちのわざ) 剣術。剣道。
・立ち往生(たちおうじょう) 1.立ったまま死ぬこと。立ち死に。 例:「弁慶の立ち往生」 2.事故などで、電車や自動車が身動きのとれない状態になること。 例:「雪のため電車が立ち往生する」 3.ものごとが行き詰まりの状態になって、対処のしようがないこと。 類:●手も足も出ない●二進も三進も
・質が悪い(たちがわるい) 1.人の、生まれ付いての気質や性根(しょうね)が悪い。 例:「あいつの酒癖は質が悪い」 2.ものごとの性質が悪い。 例:「質の悪い風邪が流行っている」 3.ものの品質が悪い。上等でない。 例:「質の悪い冗談はよせ」 ★「質(たち)」は、「立ち」からか<国語大辞典(小)>
・立ち所に(たちどころに) すぐその場で。時を置かずに。即刻。 類:●すぐに●即座に 例:「立ち所に黒山の人だかりができた」 用例:百座法談−三月九日「もろもろの煩悩たちところにのそかる」 用例の出典:百座法談聞書抄(ひゃくざほうだんぶんしょしょう?) 「百座法談」は、百日間で、百の説法を行って仏の功徳(くどく)を祈念すること。・・・調査中。
・立ち直る(たちなおる) 1.倒れそうだったものが持ち直し、元のようにしっかり立つ。 用例:類従本堀河百首−冬「難波潟つなでになびく蘆の穂のうらやましくも立ちなをるかな」 2.悪い状態になっていたものが、良い状態に回復する。 用例:徒然草−241「年月の懈怠を悔いてこの度もしたちなほりて命をまたくせば」 例:「リストラのショックから立ち直った」 3.姿勢を元のように直す。また、立て膝(ひざ)になる。 用例:浄・本朝二十四孝−一「不礼は御免と立直り」 4.場所を移る。〔日葡辞書〕 用例の出典:堀河百首(ほりかわひゃくしゅ) 和歌集。源師ョ(みなもとのもろより)藤原公實(ふじわらのきんざね)ら。長治2年(1105)。堀河天皇に奏覧されたもの。最初の応製百首和歌とされる。「堀河院御時百首和歌(ほりかわいんのおんときひゃくしゅわか)」・「堀河院太郎百首」。
・立ち退く(たちのく) 1.その場から引き下がる。その場所や席を空けるために退(しりぞ)く。 用例:栄花−浦々の別「今日こそはかぎりと誰も誰もおぼすに、たちのかむともおぼさず」 2.遠く離れる。離れた所に住む。 用例:落窪−四「はるばると峰の白雲立のきて」 3.家や土地を明け渡して立ち去る。 用例:浮・武家義理物語−二「会津を惣並に立のき」 例:「地上げ屋の嫌がらせに堪え切れずに立ち退いた」
・立ち回り(たちまわり) 1.立ち居振舞いの様子。挙動。2.能楽で歌詞を伴わないで、大・小(太)鼓の囃(はや)しに笛のあしらいで、シテが舞台の上を一回りする所作(しょさ)。『百万』『「巻絹』などにある。3.芝居や映画の演技で、斬り合ったり、格闘をしたりすること。4.喧嘩をすること。掴み合い取っ組みあって暴れること。 例:「深夜の大立回り」 5.立ち回ること。工作すること。
・立ち回る(たちまわる) 1.あちこち歩きまわる。うろうろする。徘徊する。立ち巡る。 用例:あさぢが露「いまおこなひのほどにて仏の御前に候と申ほどたちまはりたたずみありき給ふに」 2.奔走する。色々と世話をする。また、人々の間を歩き回って、自分に有利になるように工作する。 例:「如才なく立ち回る」 用例:評判・色道大鏡−五「かしこげにさへ立(タチ)まはる者は、功者なり粋なりとおもへり」 3.出向く。外出した人が出先である所に立ち寄る。また、犯罪容疑者や犯人が逃走中に立ち寄る。 例:「犯人の立ち回りそうな場所」 4.融通(ゆうずう)が利く。自由になる。また、生活などが成り立っていくようになる。 用例:滑・膝栗毛−発端「忽小銭の立まはる身分となり」 5.芝居や映画の演技で、格闘の場面を演じる。 用例の出典:あさぢが露(あさじがつゆ) 鎌倉期成立。弧本。小津桂窓の西荘文庫から発見された散逸古物語。異母兄弟が出自賤(いや)しからぬ一人の美しい女性の恋を争う、哀れにも悲しい物語。
・立ち向かう(たちむかう) 1.立って、相手と向かう。面と向かって立つ。 用例:万葉−六一「丈夫(ますらを)の猟矢(さつや)手挿み立向」 2.人に手向かいする。相手に対抗する。 類:●反抗する●敵対する 用例:宇治拾遺−五・三「舎人二人ゐて人ないれそと候とて、たちむかひたりければ」 ★「たち」は接頭語<国語大辞典(小)> 3.比喩的に、事態や事柄を避けたりしないで、堂々と取り組む。敢然と対処する。 類:●直面する 例:「難局に立ち向かう」
・立ち寄らば大木の陰(たちよらばおおきのかげ) 頼るなら大きなものに頼るべきだということ。 類:●寄らば大樹の陰