−ての(teno)−
・手の内(てのうち) 1.手の平。掌(たなごころ)。 用例:曾我物語−九「太刀よりつたふ汗に血と、手のうちしげくまはりければ」 2.腕前。手並み。技量。また、こつ。要領。 用例:浮・俗つれづれ−三「此一流にて手の中(ウチ)を覚へ」 3.乞食などに施(ほどこ)す金銭や米。 用例:俳・崑山集−一三「行に手のうちや入子のはちたたき」 4.掌に感じる重量。手応え。 用例:虎明本狂言・鱸庖丁「手のうちがかるひやうに存て」 5.権力が及ぶ範囲内。転じて、部下。手の下。また、容易なこと。思うままになること。 用例:浄・曾我会稽山−三「本望遂げんは手の内也」 6.胸の内。心の中。他人に隠している計画。企(たくら)み。 例:「手の内を見せる」 用例:評判・色道大鏡−五「むかふのまはりめたがひ、手の内かはるやうにおもはるれば」 7.三味線の撥(ばち)の中央。撥を持つとき、手で握る所。 類:●手の中 用例の出典@:俗つれづれ艸(ぞくつれづれぐさ) 浮世草紙。随筆集。井原西鶴。元禄8年(1695)。5冊。・・・詳細調査中。 用例の出典A:曾我会稽山(そがかいけいざん) 浄瑠璃。時代物。近松門左衛門。享保3年(1718)。富士山を会稽山に見立てた「曽我物」最後の作。仇討ち前後の複雑な出来事を24時間のうちにまとめた、これまでにない趣向を盛り込み、傑作の名が高い。<近松門左衛門でござーい!>
・手の内に丸め込む(てのうちにまるめこむ) 巧みに丸め込んで、思うままに扱う。 類:●手に入れる
・手のない将棋は負け将棋(てのないしょうぎはまけしょうぎ) なにごとにも、手段がなければ成功は覚束(おぼつか)ないということの喩え。
・掌で転がす(てのひらでころがす)・手の平で〜 1.小さい物体を、開いた手の平の上に乗せて転がす。2.(俗語)転じて、人などを、意のままに操る。弄(もてあそ)ぶ。 類:●手玉に取る 例:「男を手の平で転がすキャバ嬢」
・掌を返す(てのひらをかえす)[=手の裏を〜] 1.瞬(またた)く間に変わる様子を表わす。 類:●掌(たなごころ)を返す●手を返す 用例:随・戴恩記−上「手のうらをかへすやうなる乱世に」 2.ほんの短い間である。 用例:俳・一茶真蹟「手のうら返さぬうち苦々しき死偃を見るとは」 3.露骨に態度を変える様子を表わす。 類:●手を反す●手の裏を返す 用例:人情・春色辰巳園−三「そまりやすいはさめやすいと、手のうらかへすいしゅがへし」 用例の出典@:戴恩記(たいおんき) 随筆集。松永貞徳著。 ・・・詳細調査中。 用例の出典A:一茶真蹟集(いっさしんせきしゅう) 雑俳。・・・調査中。
・手の外(てのほか) ものごとが、考えていたことと全く違っていること。また、その様子。 類:●思いの外●意外
・手の施しようがない(てのほどこしようがない) あまりに状況が複雑、或いは壊滅的なため、対処のしようがない。 類:●手が付けられない
・手の舞い足の踏む所を知らず(てのまいあしのふむところをしらず) 1.強い感情に促され、歌うだけでは足りなくて知らず知らずのうちに踊り出す。非常に喜んで有頂天になっている様子。小躍りして喜ぶ様子。2.気持ちが動顛(どうてん)して我を忘れる。慌てふためく様子。また、性根を失った状態。 出典:「詩経−周南、関雎序」「礼記−楽記」
・手の物(てのもの) 1.手に入ったもの。自分のもの。また、手にしているもの。2.自分の自由にできるものごと。熟練して得意とする技。 類:●お手の物 3.技巧を凝らした料理。
・手の者(てのもの) その配下に属するもの。手下。
・手の奴足の乗り物(てのやっこあしののりもの) 召使い代わりに己の手を、乗り物代わりに己の足を使うという意味で、何事も自分の力で処理して、他人の力を借りないことの喩え。
・手の曲に回る(てのわにまわる) 手中に入れる。自由自在にする。