−ちり(tiri)−
・塵居る(ちりいる) 塵が積もる。塵が掛かる。また、汚(けが)れる。
・散り際(ちりぎわ) 1.花の散るとき。今にも散ろうとする間際。2.比喩的に、人が死のうとする直前。 例:「散り際を潔(いさぎよ)くする」
・塵塚に鶴(ちりづかにつる) つまらない場所に、際立って優れたものがあることの喩え。また、そのもの。 類:●掃き溜めに鶴
・塵に立つ(ちりにたつ) 俗世間の噂となる。
・塵に継ぐ(ちりにつぐ) 先人の歩いた後に残る塵を受け継ぐという意味で、先人の遺業を継ぐこと。後を継ぐ。
・塵に同ず(ちりにどうず) 1.自分の徳や知恵を表に現わさないで、俗世間の人と隔てなく付き合う。 類:●塵に交わる 2.仏菩薩が智慧(光)を秘めて衆生のために同じ煩悩(塵)の姿を取って悟りに導く。 類:●和光同塵●塵に交わる 出典:「老子−四章」「和其光、同其塵」
・塵に交わる(ちりにまじわる) 聖人などが、俗世の人たちと付き合う。 類:●塵に同ず
・ちりの粉(ちりのこ) 「麦焦がし」を言う女房詞。 参考:麦焦がし(むぎこがし) 大麦を煎ってこがし、臼でひいて粉にしたもの。これに砂糖を混ぜ、水で練ったりして食べる。
・塵の境(ちりのさかい) 塵で汚れた世界。穢(けが)れたこの世。煩(わずら)わしい世の中。 類:●俗世間 ★「塵境(じんきょう)」の訓読み。
・塵の末(ちりのすえ) 1.塵点劫(じんでんごう)の後の世の者。2.物の数でないこと。数に入らない人。つまらない人間。 類:●末輩
・塵の住処(ちりのすみか) 俗世界の住処。穢(けが)れたこの世の住まい。
・塵の外(ちりのほか) 世俗の煩(わずら)わしさから離れた所。俗世間と隔たった場所。 類:●浮世の外●世外  ★「塵外(じんがい)」の訓読み。
・散りの紛い(ちりのまがい)[=迷い] 花や葉などが、散り乱れて見分けの付かないこと。しきりに散って入り交じること。 用例:万葉−3700「足引の山下光るもみちばの知里能麻河比(チリノマガヒ)は今日にもあるかな」
・塵ばかり(ちりばかり)・塵ほど 僅(わず)かばかり。少しばかり。 用例:源氏−紅葉賀「御覧ぜさせて、ただ塵ばかりこの花びらにと聞ゆるを」
・塵も付かず(ちりもつかず) 汚れや穢(けが)れが身に付かない。転じて、非難されるような僅(わず)かな汚点、欠点もない。
・塵も積もれば山となる(ちりもつもればやまとなる)
・塵も灰も付かぬ(ちりもはいもつかぬ) きっぱりと言い放つ様子。取り付く島がまったくない。素っ気ない。 類:●塵灰付かぬ●取り付く島もない
・塵を出ず(ちりをいず) 俗世間を離れる。出家する。 用例:新古今−哀傷「秋風の露のやどりに君をおきて塵をいでぬる事ぞかなしき」
・塵を切る(ちりをきる) 力士が、土俵上で徳俵に蹲踞(そんきょ)して、手を合わせた後、掌を広げて両腕を横に伸ばす動作をする。
・塵を絶つ(ちりをたつ) 1.俗世間との縁を切る。世俗との繋(つな)がりを切る。2.塵も立たぬくらい早く走る。転じて、徳行、人格が人の追随を許さぬ境地にあること。 出典:「荘子−田子方」に見える顔淵(がんえん=顔回)の言葉「夫子奔逸絶塵、而回瞠若乎後矣」
・塵を望んで拝す(ちりをのぞんではいす) 貴(たっと)い人の来往を遠く見て礼拝する。権勢に阿(おもね)り媚(こ)びること。 類:●肥馬の塵を望む 出典:「晋書−石崇伝」
・塵を捻る(ちりをひねる) 1.心ばかりの印として、ささやかなものを贈る。 類:●塵を結ぶ 2.はにかんでもじもじする。はにかんで手持無沙汰にしている。 類:●のの字を書く 用例:浄・菅原伝授手習鑑「祝儀は述べても赤面し、塵を捻らぬばかりなり」
・塵を結ぶ(ちりをむすぶ) 1.心ばかりの印として、ささやかなものを贈る。2.手を清めるのに水がない時、塵を捻る動作をして汚(けが)れを落とし、手水の代わりとする。塵手水(ちりちょうず)を使う。 類:●塵を捻る
・塵を結んでも志(ちりをむすんでもこころざし)[=印] ささやかな贈りものでも、贈り主の心の現われである。量は少なくとも誠意が現われているということ。 類:●志は髪の筋●気は心