−とき1(toki1)−
・時有り(ときあり) 1.時節が到来する。 用例:風雅−雑中「時有りて花も紅葉もひと盛り」 2.好機に合う。栄える。時にあう。 用例:栄花−月の宴「時有るも時なきも、御心ざしの程こよなけれど」 用例の出典:風雅和歌集(ふうがわかしゅう) 南北朝時代の17番目の勅撰和歌集。花園院監修の下に、光厳院が撰定した。貞和5年(1349)頃成立。20巻。歌数は流布本で2,201首、四季・旅・恋・雑・釈・教・神祇・賀の部立より成る。「玉葉集」を踏襲し、京極派の影響が強い。「四季」部の歌が「恋」部の約2倍を占めているのも大きな特徴。玉葉集との違いは、当代重視であること。代表歌人は伏見院、永福門院、花園院、藤原為兼、定家など。「風雅集」とも。 参考:玉葉和歌集(ぎょうようわかしゅう) 鎌倉後期の歌集。20巻。伏見院の命により京極(藤原)為兼が撰した。勅撰和歌集の14番目。鎌倉室町期の勅撰集の中で、歌風の清新さにおいて風雅和歌集とともに群を抜く。「玉葉集」とも。
・時移り事去る(ときうつりことさる) 歳月が経過すれば、すべてのものごとは変化する。 出典:陳鴻の「長恨歌伝」
・時が解決する(ときがかいけつする) 辛い思いや困難な問題も、時が経つにつれて軽くなり、やがて自然と収まってしまうものだ。
・時異なれば事異なり(ときことなればことことなり) 時機が違えば事態も異なってくるという意味で、時と場合により、やることも変わってくるし、その結果も異なってくるということ。
・時しもあれ(ときしもあれ)[=こそあれ] 適当な時期は外にもあろうに、どうして。時もあろうに折悪しく。 例:●ときしまれ 用例:古今−八三九「時しもあれ秋やは人のわかるべきあるをみるだにこひしき物を」 ★「あれ」は逆接条件を表す<国語大辞典(小)>
・時知らぬ山(ときしらぬやま) 富士山のこと。いつも雪を頂いているので季節を知らないということから。
・時知り顔(ときしりがお) 時節を知り、それを弁(わきま)えているかのような顔付き。時節に合ったのを誇るような顔付き。 類:●時を得顔 用例:源氏−薄雲「心やりて時知り顔なるもあはれにこそ」
・時知る雨(ときしるあめ) 時雨(しぐれ)の異称。時雨が秋の終わりに時期を限って降るところから言う。
・時として(ときとして) 1.下に打消しの語を伴って、一刻も〜ない。少しの間も〜ない。常に〜ない。 例:方丈記「心念念に動きて、時として安からず」 2.場合によっては。時には。偶(たま)に。 用例:新撰六帖−二「ときとして咲つく花の色色を」 例:「人は時として過ちを犯す」 用例の出典:新撰六帖題和歌集(しんせんろくちょうだいわかしゅう) 和歌集。衣笠家良の編。寛元2年(1244)。・・・詳細調査中。
・時無し(ときなし) 1.定まった時がない。絶え間がない。いつものことである。 用例:万葉−二五「み吉野の耳我の嶺に時無(ときなく)そ雪は降りける」 2.不遇である。時勢に乗っていない。世に用いられず失意の状態にある。 用例:今鏡−藤波・下「身の時なかりしをのみ見え奉りて」
・時に遇えば鼠も虎になる(ときにあえばねずみもとらになる) 好時機に巡り合うと、鼠のようなつまらない者でも、勢いが盛んになり権勢を揮(ふる)うようになる。
・時に当たる(ときにあたる) 1.その時期にぶつかる。その時にさし当たる。 類:●時に臨む 2.相応(ふさわ)しい時になる。 類:●時に遇う 用例:太平記− 27「其上今の相国は、時に当たる職に達し」
・時に中す(ときにちゅうす) 真の中庸とは、その時と場合においてその中間を取ることである。例えば、善と悪の中間を取ることが「中庸」というわけではなく、臨機応変に程好いところを選ぶのが中庸だということ。 出典:「礼記−中庸・二章」「仲尼曰、《略》君子之中庸也、君子而時中」
・時に付く(ときにつく) その時その時に応じる。その時々に順応する。 用例:源氏−帚木「時につけつつ、さまをかへて」
・時に因る(ときによる) 1.時の勢力を頼む。時流に従う。 用例:源氏−紅梅「世の人も時による心ありてにや」 2.自分の権勢を頼む。権勢に任せて振る舞う。 用例:源氏−藤裏葉「時により心おこりして」 3.時流に相応(ふさわ)しいようにする。時節に適応する。 用例:源氏−幻「ときによりたる物うちずんじなどばかりぞせさせ給」 4.その時々の状況に応じる。 類:●場合に因る 用例:義経記−四「興ある法師の戯かな、ときにこそよれ」 用例の出典:義経記(ぎけいき) 軍記物語。8巻。作者、成立年代ともに未詳、室町前期とされる。源義経の生涯を伝説なども加えて描いたもの。源平争乱のころの活躍については触れられることはなく、不遇な生い立ちと悲劇的な末路のみが詳述されている。浄瑠璃、歌舞伎、御伽草子、読本など後世の文学の素材となる。「判官物語」。「義経物語」「牛若物語」「よしつねき」とも。