−とり2(tori2)−
・鳥なき里の蝙蝠(とりなきさとのこうもり)
・取り成し顔(とりなしがお) その場の具合いの悪い状態を、巧く納めよう、取り繕(つくろ)おうとする顔付き。
・鳥の跡(とりのあと)[=足] 1.鳥の足跡。2.文字。筆跡。また、文字を書いたもの。手紙。 伝承:中国の黄帝の時、蒼頡(そうけつ)が鳥の足跡を見て文字を創作したと言われる。「蒼頡」については、個人名ではなく複数の研究者たちだとする説もある。 3.下手(へた)な筆跡。 類:●金釘流
・酉の市の売れ残り(とりのいちのうれのこり) 醜い女を指す言葉。 類:●酉の町の売れ残り ★酉の市で売る熊手についているお多福の売れ残りの面のようなできの悪い顔の意からとも、酉の市の夜は、吉原遊郭が繁昌するのに、そういう日にさえ客のつかない醜い顔の意からともいう<国語大辞典(小)>
・鳥の空音(とりのそらね) 鶏の鳴き真似。 用例:後拾遺−940「夜をこめて鳥のそらねははかるとも世に相坂の関は許さじ」 故事:「史記−孟嘗君伝」 斉の孟嘗君が秦の国を脱出しようとしたとき、函谷関に着き供の食客が鶏の鳴き真似をして欺き、夜明け前に関門を開けさせ、無事通過した。 用例の出典:後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう) 平安末期の4番目の勅撰集。八代集の一つ。20巻。承保2年(1075)、白河天皇の下命があり、応徳3年(1086)成立。撰者は藤原通俊。和泉式部、相模、赤染衛門、能因、伊勢大輔ら320人あまりの歌1218首を四季、賀、別、旅、哀傷、恋、雑など、10部に分類して収録したもの。雑の部に神祇、釈教を新しく立て、叙景歌などに新風が見られる。
・鳥肌立つ(とりはだだつ) 寒さや恐怖などの強い刺激によって、皮膚に鳥肌ができる。 類:●総毛立つ●身の毛が弥立つ
・取り引き(とりひき) 1.商人と商人、または商人と顧客との間の売買行為。また、営利のためになす経済行為。商取引き。 例:「取引先」 ★通例送り仮名「り」「き」を省いて使う。 2.双方の利益となるような交換条件を付けた遣り取り。 類:●掛け引き 例:「犯人と取り引きする」
・取り巻き(とりまき) 1.取り巻くこと。周りを囲むこと。2.人に纏(まと)わり付いて、機嫌を取ること。金や権勢がある人に媚び諂(へつら)うこと。また、その人。 例:「社長の取巻き連中」
・取り乱す(とりみだす) 1.散らして乱す。取り散らす。また、身なりなどがだらしない。 用例:咄・鹿の巻筆−二「親の跡をとりみださず」 2.心の平静を失う。見苦しい態度をする。 用例:徒然草−二四一「我にもあらず、取みだしてはてぬ」 例:「秘密を暴かれて取り乱す」
・取りも敢えず(とりもあえず) 1.取り押さえることもできないうちに。2.直ぐさま。忽(たちま)ちに。立ち所である。取るべきものも取ることができないほど急である。3.何とも処置のしようがない。 ★多く副詞的に用いる<国語大辞典(小)>
・取り持つ(とりもつ) 1.手に取って持つ。手に握る。 用例:万葉−904「まそ鏡手に登利毛知(トリモチ)て」 2.引き受けて執り行う。責任をもって政務などにあたる。 類:●取り仕切る 用例:万葉−4008「食(を)す国のこと登理毛知(トリモチ)て」 3.双方の間に立って取り成す。仲立ちをする。周旋(しゅうせん)・斡旋(あっせん)する。また、人と人を結び合わせる場合にも使う。 用例:増鏡−15「源中納言具行とりもちて事行ひけり」 4.接待する。引き受けて世話をする。 類:●持て成す 用例:能因本枕−306「まつはれ追従し、とり持てまどふ」 5.ある考えをしっかり心に抱く。 用例:徒然草−188「何方をも捨てじと心にとりもちては、一事も成るべからず」 用例の出典:増鏡(ますかがみ) 歴史物語。南北朝時代。「四鏡」の一つ。17巻。また、19巻・20巻の増補本がある。著者は二条良基説が有力だが未詳。応安年間(1368〜1374)頃の成立という。後鳥羽天皇の生誕から後醍醐天皇の隠岐からの還幸までの15代、150余年の歴史を和文で綴った。
・取りも直さず(とりもなおさず) そのままに。即(すなわ)ち。他でもなく。上に述べたことが次に述べることに等しいこと。
・屠竜の技(とりゅうのぎ)[=術(じゅつ)] 学んでも実際には役に立たない技の喩え。 類:●徒労(とろう) 故事:「荘子−列禦寇」 竜を殺す技を身に付けるのに多くの費用と時間を掛けたが、竜がいなかったのでその技が役に立たなかった。
・取りを務める(とりをつとめる) 寄席で、最も芸の優れた者として、最後に出演する。 類:●真を打つ ★「取り」の語源は、出演料に纏(まつ)わるという説がある。出演料を「割り」と呼ばれる歩合によって分配する立場の人が「とり」であったとされる。