−とう(さ)(tou3)−
・東西暮れる(とうざいくれる) 東も西も分からなくなる。 類:●東西を失う●途方に暮れる 用例:太平記−一七「東西くれて降雪に道を踏迷て」
・東西知らず(とうざいしらず) 西も東も分からない。ものごとを判断する能力がまったくない。分別がまったくない。 類:●東西を弁えず 用例:宇津保−国譲上「みだり心地、東西知らず侍りて」
・東西する(とうざいする) あちこち体を動かす。あちこちに行く。 用例:枕−八二「ただ、袖をとらへて、とうさいせさせず乞ひとりて、持て来」
・東西東西(とうざいとうざい・とざいとうざい) 元々は、相撲で、東から西まで静まり給えという意味で使われ始めたものという。 1.大勢の騒がしい中に立ち入ってそれを静めるときに言う言葉。 類:●静かにしろ●静粛に 用例:黄・孔子縞于時藍染−下「とうざいとうざい。やかましいわへ」 2.特に、芝居や相撲で、見物人を静めたり、口上を述べるのに先立って注意を引いたりするときに言う決まり文句。 類:●東西 用例の出典:孔子縞于時藍染(こうしじまときにあいぞめ) 黄表紙本。山東京伝(北尾政演)画・作。寛政元年(1789)。江戸大伝馬町大和田安部衛刊。寛政改革の朱子学奨励に取材し、聖賢治下、道義の行われる世の中を戯画的に描いたもの。経書の文句を一々忠実に履行しなければならない町人の滑稽な姿を、誇張して風刺的に著(あらわ)す。
・東西南北(とうざいなんぼく) 1.あちらこちら。諸方。 類:●四方八方 2.住所が一定しないで、あちらこちらを彷徨(さまよ)い歩くこと。四方に流離(さすら)うこと。 用例:読・弓張月−後「久しく東西南北すといへども、いまだ明主に遇(あは)ず」 3.方角。方向。
・東西南北の人(とうざいなんぼくのひと) 1.諸方の人という意味で、住所不定であちこちを彷徨(さまよ)い歩く人のこと。 類:●放浪者 2.あちこちから集まってくる人のこと。 出典:「礼記−檀弓・上」
・東西を失う(とうざいをうしなう) 施すべき方法が分からなくなる。 類:●東西暮れる●途方に暮れる●途方を失う
・東西を弁えず(とうざいをわきまえず)[=弁(べん)ぜず・知らず・分かず・存ぜず] どちらが東でどちらが西かも分からない。まったく分別がない。 用例:宇津保−国譲上「みだり心ち、とうざいしらず侍りて」
・当座凌ぎ(とうざしのぎ) 一時の間に合わせ。足りないものがあるのだが、差し当たっては現在あるもので済ませて用を足すこと。 類:●一時凌ぎ
・当座の花(とうざのはな) そのときそこで見た、目に美しく感じられるもの。差し当たりの楽しみとなるもの。
・同日の論にあらず(どうじつのろんにあらず)[=談に〜][=ではない] まったく見劣って、比べものにならない。同様に見なして談ずべきことでない。同じ扱いにはできない。 類:●日を同じくして論ぜず●同年の論にあらず 例:「彼に比べれば私など同日の談ではありません」 出典:「史記−游侠伝」「不同日而論矣」
・闘雀人に怖じず(とうじゃくひとにおじず・にんに〜) 弱い雀(すずめ)でも、闘(たたか)いに夢中になっているときは、相手が人間でも恐れないものである。争いに夢中になっている時は、自分の身の危険も顧(かえり)みないものであるということ。 類:●噛み合う犬は呼び難し●戦う者はその身を忘るるものなり 用例:日葡辞書
・陶朱猗頓の富(とうしゅいとんのとみ) 莫大な富。また、富豪の喩え。 類:●猗頓の富 故事:「過秦論」 陶朱(=范蠡(はんれい))は金満家であり、魯の猗頓(いとん)は陶朱に金持ちになる法を教えられて大富豪になった。 出典:過秦論(かしんろん) 漢初。賈誼(かぎ)。中国をいかなる方式で統一すべきかについての論文。重要な論点の一つとして、封建制と中央集権制の優劣を論じた。
・同舟相救う(どうしゅうあいすくう) いつもは仲の悪い同士でも、いざというときや共通の利害のためには助け合うものであるということ。 類:●呉越同舟●舟を同じくして江を渡る 出典:「孫子−九地」
・同種同文(どうしゅどうぶん) 国と国とで互いに文字が同じで、人種も外見上同じであること。 ★主に日本と中国との関係を示していう<大辞林(三)>
・同床異夢(どうしょういむ) 1.一緒に寝てもそれぞれ見る夢が別である。起居(ききょ)を共にしていながら、お互いに心が離れ別々の事を考えているということ。 類:●同牀各夢 出典:「与朱元晦書(陳亮)」「同牀各做夢、周公丹不能学得」 2.比喩的に、同じ立場、同じ仕事にありながら、意見や目標などが違っていること。 反:■呉越同舟
・どうしようもない 1.そうなるより他に方法がない。他に方策の取りようもない。 例:「ここまで来たらどうしようもない」 2.救い難い。 例:「どうしようもない野郎だ」
・藤四郎(とうしろう・とうしろ) 技芸などに熟達していない人。経験の浅い人。 ★「素人(しろうと)」をひっくり返して人名のように言った言葉。
・唐人の寝言(とうじんのねごと) 1.何を言っているのか訳の分からない言葉。2.筋が通らないことをくどくど言うことの喩え。
・同性相親しむ(どうせいあいしたしむ) 「同性」は、他の者と同じ気質を持つという意味。お互いに似たような気質の者同士は仲良くなるものだということ。 類:●同気相求める●類は友を呼ぶ●蓑の傍へ笠が寄る●牛は牛づれ馬は馬づれ●同声相和す
・同生共死(どうせいきょうし) 死ぬも生きるも一緒だという意味で、二人以上の人間がその生死を共にすること。
・冬扇夏炉(とうせんかろ) 無用なものの喩え。 類:●夏炉冬扇●寒に帷子(かたびら)土用に布子(ぬのこ)●六日の菖蒲十日の菊 出典:「論衡−逢遇」
・刀爼魚肉(とうそぎょにく) 俎板(まないた)の上に乗せられて、今にも料理されようとしている魚や肉。死に瀕した絶体絶命の危険に曝(さら)されていることの喩え。 類:●俎板の鯉●俎上の魚 故事:「史記−項羽本紀」「如今人方為刀俎、我為魚肉、何辞為、於是遂去」 鴻門(こうもん)の会で沛公(後の高祖・劉邦)が楚の項羽から命を狙われたとき、家臣の樊(はんかい)が言った言葉。