−うし1(usi)−
・牛驚くばかり(うしおどろくばかり) ものの色が非常に黒い様子。
・潮の水(うしおのみず) 江戸の諸侯の邸宅で行なわれた慣習。正月始めの辰の日辰の時に、辰年生まれの人が、竈(かまど)の上にあたる部分の屋根に海水を注ぐ、火災防止の呪(まじな)い。
・潮の湧くが如し(うしおのわくがごとし) 勢いが力強く盛り上がる様子。
・牛掴むばかりの暗がり(うしつかむばかりのくらがり) まったくの暗闇。
・牛と芥子は願いから鼻を通す(うしとからしはねがいからはなをとおす) 牛が鼻輪を通されて自由を失うのは、牛の天性が招(まね)いたものであり、人が芥子で鼻を刺激されて困るのも、その人が自分で望んで口にしたためだということ。自ら望んで災いを受けること。 類:●奴隷はその鎖を愛する●牛は願いから鼻を通す
・氏無くして玉の輿(うじなくしてたまのこし) 女は家柄や育ちが卑しくても、器量次第で貴人の愛を得て地位を得ることができる。 類:●女は氏無くて玉の輿
・牛に汗し棟に充つ(うしにあせしむなぎにみつ) 車で引かせると牛に汗を掻かせ、積み上げると建物の棟木に届くという意味から、蔵書が多いこと。 類:●汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)
・牛に経文(うしにきょうもん) いくら説き聞かせても、何の効果もないことの喩え。 類:●馬の耳に念仏
・牛に食らわる(うしにくらわる)・喰らわる 人に騙(だま)される。 類:●一杯食う 用例:虎明本狂言・酢擲「よひきもをつぶいた。うしにくらはれだまされた」 用例:狂・朝比奈「牛にくらはれ、閻魔王がゆくさきまでふがわるい」 用例の出典:酢擲(すはじかみ) 狂言。各流。酢売りと生姜売りが商人司(あきんどづかさ)を決めようとし、系図を比べ、互いの商売物に装(よそ)えて洒落を言い合うが、優劣がつかず、結局一緒に商売することになる。
・牛に対して琴を弾ず(うしにたいしてことをだんず) 牛に対して琴を弾いてもなんにもならない。いくら高尚なことを説き聞かせても、志の低い愚かな者にはなんの役にも立たない。 類:●牛の前に調ぶる琴●馬の耳に念仏 故事:「祖庭事苑」 魯(ろ)の国の公明儀こうめいぎ)が「清角の操」という曲を奏した時、牛は平気で草を食っていたが、蚊や虻が子牛の鳴き声のような音を立てた時には耳を欹(そばだ)てて聞き、尾を振って歩き出した。 出典:祖庭事苑(そていじえん) 中国の字書。睦庵善卿(むつあんぜんきょう)撰。宋代、大観2年(1108)。2冊8巻。当時の修行者が参禅弁道に際して、請益の語に通ぜざるを慨して、雲門、雪竇、義懐、風穴、法眼、天台徳韶らの語録、および『池陽百問』『八方珠玉集』『証道歌』『十玄談』などからおよそ2,400余の事項を選んで、一語ごとに詳細な解説を加えたもの。
・牛に引かれて善光寺参り(うしにひかれてぜんこうじまいり)
・牛にも馬にも踏まれぬ(うしにもうまにもふまれぬ)[=踏まさぬ] 子供が無事に成長することの喩え。
・牛の歩み(うしのあゆみ) 進み具合いが遅いことの喩え。 類:●牛歩(ぎゅうほ)
・牛の一散(うしのいっさん) 普段は決断の鈍(にぶ)い人でも、場合によっては急に逸(はや)り進むことがある。
・牛の籠抜け(うしのかごぬけ) 鈍間(のろま)な者が素早くしようとすることの喩え。また、鈍重な者はものごとを行なうのに不手際であることの喩え。
・牛の糞(うしのくそ) 1.牛の糞(ふん)は、表面は固そうに見えても内側が柔らかいことから、表面は剛直に見えるが、内側は柔らかい人。特に、女にとって油断のならない男のこと。2.牛の糞が段々になっているところから、ものごとには順序や段階があるということの喩え。3.ぐるぐる巻きに結(ゆ)った女性の髪形。
・牛の角を蜂が刺す(うしのつのをはちがさす)[=蚊がせせる] 角を蜂や蚊が刺しても牛は痛くも痒くも感じないように、ものごとに対してなんとも感じないこと。 類:●鹿の角を蜂が刺す
・牛の寝た程(うしのねたほど) 金銭を大量に積み上げた様子。 類:●山ほど 用例:浄・嵯峨天皇甘露雨−二「牛のねた程金もつくねてゐるげな」
・牛の涎(うしのよだれ)[=小便(しょうべん)] だらだらと長く続くことの喩え。