−わた(wata)−
・私雨(わたくしあめ) 限られた小区域にだけ降る俄(にわ)か雨。 類:●我が儘雨 ★特に、有馬、鈴鹿、箱根などの山地のものが知られている<国語大辞典(小)> ★昔から、箱根・比叡・丹波などのものが有名<大辞林(三)>
・私する(わたくしする) 1.自分勝手をする。身勝手に振舞う。 用例:浄・本朝二十四孝−四「われも随分精出して御奉公に私すな」 2.公的なものを自分のもののように扱う、また、自分のものにする。 類:●私物(わたくしもの)にする 3.独り占めにする。 ★自称の「わたくし(わたし・あたし)」に「私」の字を使うのは日本の特別な用法。中国では「私」を自称としては使わない。 用例の出典:本朝二十四孝(ほんちょうにじゅうしこう) 浄瑠璃。時代物。5段。近松半二・三好松洛・竹田因幡・竹本三郎兵衛ら合作。明和3年(1766)大坂竹本座初演。上杉・武田両家の争いを題材とし、「信州川中島合戦」など先行諸作品の影響を受けて成立。三段目の切「勘介住家」、四段目の切「十種香(じしゅこう)」「狐火」などが有名。
・綿にて首を締む(わたにてくびをしむ) 遠回しにじわじわと責めたり痛め付けたりすること。 類:●真綿で首を締める
・海の原(わたのはら・わだのはら) 広々とした海。大海。 類:●海原(うなばら)
・綿のように疲れる(わたのようにつかれる)・綿になる 身体から力が抜けてぐったりするほど疲れる。とても疲れた様子を喩えていう。 類:●くたくた 用例:浄・浦島年代記−一「口のこはい荒馬でも、一責(せめ)では乗伏せてわたにする」 例:「労働で綿のように疲れ、泥のように眠る」
・渡り合う(わたりあう) 1.ある場所で出会って一緒になる。行き会う。また、ある出来事に巡り会う。 用例:讚岐典侍−下「二月になりて、わたくしのきにちにわたりあひたり」 2.相手になって闘(たたか)う。切り合う。応戦する。渡し合う。 例:「師範と互角に渡り合う」 用例:太平記−二「四人左右より渡合て、鋒(きっさき)を指合て切て回る」 3.互いに激しく議論をし合う。論戦する。また、争う。 例:「与野党が激しく渡り合う」 4.応対する。 用例:浮・男色大鑑−二「門を閉てさらに渡(ワタ)りあはず」 用例の出典:讃岐典侍日記(さぬきのすけのにっき・さぬきのてんじにっき) 日記。2巻。讚岐典侍(藤原長子)著。嘉承2年(1107)6月から翌年12月晦日までの記事で、上巻には堀河天皇の発病から崩御まで、下巻には鳥羽天皇に出仕しながら、堀河天皇の頃を忍ぶ明け暮れが記されている。
・渡り歩く(わたりあるく) 1.廊下などを渡って歩く。2.あちこちを歩き回る。3.特に、生活の手段を求めたりしながら、転々と、各地を移り住む。また、色々と職業や職場を変える。 例:「幾つもの会社を渡り歩く」
・渡り鳥(わたりどり) 1.鳥類の生態上の区分。留鳥(りゅうちょう)に対する語。繁殖地と越冬地とが離れていて、毎年定期的にその間を往復する鳥を指す。また、ある地域に毎年一定の季節にだけ現れる鳥を指すこともあるが、この場合には候鳥(こうちょう)と呼ぶ方が正しい。カモ類の大部分、ガン類、ハクチョウ、ツグミなど。2.外国から我持ち込まれてきた鳥。孔雀や鸚鵡(おうむ)など。3.定住しないで方々を渡り歩いて生活する人。各地を転々としながら、商売や興行をして稼ぐ人。 類:●渡り者
・渡りに船(わたりにふね)
・渡りを付ける(わたりをつける) 1.話し合いの切っ掛けを作る。人・組織などと関係を付ける。また、諒解を得るよう交渉する。交渉して諒解を得る。2.仲裁の口を利く。
・渡る世間に鬼はない(わたるせけんにおにはない)
・轍の鮒(わだちのふな)[=魚] 危急が差し迫っていること、また、困窮していること。 類:●轍鮒(てっぷ)の急 出典:「荘子−外物」