−やふ(yahu)−
・藪医者(やぶいしゃ) 診断や治療が下手な医者。 類:●藪●庸医(ようい)●竹庵●藪薬師(やぶくすし) ★「やぶ」は「野巫(やぶ)」で、本来は「呪術を医薬とともに用いる者」の意であったという。それに「藪」「野夫」などの漢字を当てて、田舎医者の意となり、あざけっていったものか<国語大辞典(小)> ★他説として、「藪」は「見通しが利かない」から、「少々の風(風邪)で騒ぎ立てる」からとも。 参考:「土手医者」=藪も生えない、「筍(たけのこ)医者」=藪にもなれない、「雀医者」=これから藪に向かう、「紐(ひも)医者」=これに掛かったらまず助からない、などもある。
・藪医竹庵(やぶいちくあん) 「藪医者」のことを、人名のように言ったもの。 類:●竹庵
・藪医者の病人選び(やぶいしゃのびょうにんえらび) 藪医者は治療の難しそうな患者を診たがらない。そのように、才能や実力のないような者ほど、仕事に難癖をつけたり、選(え)り好みをしたりするものであるということ。 類:●藪薬師(くすし)の病人選び
・藪から棒(やぶからぼう)
・吝かでない(やぶさかでない) 物惜しみをせずにするの意味で、躊躇(ちゅうちょ)せずにすること。渋らずに、率先して行なうこと。頼みなどを、快く引き受けるときなどに言う。 用例:随・老人雑話−乾「太閤心も辞も行跡も、少も吝さかなることなき生質也」 例:「協力するに吝かでない」 ★「吝か」は、物惜しみすること、けちであること。転じて、思い切りが悪いこと。 用例の出典:老人雑話(ろうじんざつわ) 随筆集。江村宗具(専斎)述、伊藤坦庵記。宝永7年(1710)。1冊。江戸初期、朱子学者でもあった伊藤坦庵が記した逸話物。師の江村専斎の談話を元に綴ったもの。戦国武将の逸話や当時の人々の生活が描かれている。
・藪に功の者(やぶにこうのもの)[=功・功者(こうしゃ)] 1.草深い鄙(ひな)びた所にも立派な者がいるということ。馬鹿にしている者の中に、案外立派な者が交じっているということ。2.「藪」は藪医者のこと。藪医者だと言われている者の中に、案外名医が交じっているということ。 ★「やぶ」には「野夫」を、「こう」には「剛」を当ててもいう<国語大辞典(小)>
・野夫に剛の者(やぶにごうのもの) 粗野な者たちの中にも勇敢な者がいるものだということ。
・藪に馬鍬(やぶにまぐわ・まんぐわ・うまぐわ) 根が蔓延(はびこ)っている藪で馬鍬を揮(ふる)うということで、無理な事を敢えて行なうこと。
・藪に目(やぶにめ)[=耳] どこで誰が見ているか分からないということで、秘密などは漏れ易いということ。 類:●壁に耳
・藪にす(やぶにめくばせす・めくわせす) 藪の方に向かって目配せをする(意味の詳細は不明)。 用例:太平記−三六「独笑(ひとりゑみ)して、藪(ヤブ)に(メクハセ)し居たる処に」 ★余所見の意とも、藪睨みの意とも、事が秘密であることを示す意ともいわれる<国語大辞典(小)>
・藪の中(やぶのなか) 関係者の言うことがまちまちで、真相が分からないこと。 例:「真相は依然として藪の中だ」 ★芥川竜之介の同名の小説から<広辞苑第四版(岩)>
・藪の中の荊(やぶのなかのいばら) 周囲の環境や交友関係が悪いと、影響されて自分も悪くなってしまうものであるということ。 反:■麻の中の蓬
・薮蛇(やぶへび) 余計なことをして、却(かえ)って悪い結果を招く。 類:●藪を突突いて蛇を出す
・破れても小袖(やぶれてもこそで) 絹地の着物は、仮令(たとえ)破れてもやはり絹であるという意味から、質の良いものは、壊れてもなおそのよい性質を失わないということ。 類:●腐っても鯛
・藪を突突いて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)