−やる(yaru)−
・遣る方ない(やるかたない) 1.心に蟠(わだかま)っていることの遣り場がない。思いを晴らす方法がない。 類:●遣らん方なし 用例:宇津保−菊の宴「程もなしとかいふなる身より思ひたまひあまりぬるを、やるかたなければなん」 2.並(なみ)一通りでない。程度がどうしようもないほど異常である。 用例:塩山仮名法語−二「直に心絶し、やるかたなき工夫をして、間断なくんは」 3.伝えてゆく方法もない。 用例:却来華「嫡孫は未だ幼少也。やるかたなき二跡の芸道」 用例の出典@:塩山仮名法語(えんざんかなほうご) 臨済宗の塩山抜隊(ばっすい)和尚が述作した法語集。1巻。13章から成り、僧、尼僧、在俗信者を対象としたもの。成立は至徳4年(1387)以前。 用例の出典A:却来華(きゃくらいか) 世阿弥。最後の伝書。永享5年(1433)。地方興行に出て三重県の津市で突然早世した長男元雅(もとまさ)の死を悼んだ文章。元雅の死によって「当流の道絶えて、一座すぞで破減しぬ」とまで記し、観世座が事実上解体された激しい慟哭を綴る。
・遣る方もない(やるかたもない) 為(な)すべき方法もないという意味から、思いを晴らす手段がないということ。また、致し方ないということ。