刑法-1/6
第1編 総 則
第1章 通 則
(国内犯)
第1条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
(すべての者の国外犯)
第2条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
1.削除
2.第77条から第79条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
3.第81条(外患誘致)、第82条(外患援助)、第87条(未遂罪)及び第88条(予備及び陰謀)の罪
4.第148条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
5.第154条(詔書偽造等)、第155条(公文書偽造等)、第157条(公正証書原本不実記載等)、第158条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
6.第162条(有価証券偽造等)及び第163条(偽造有価証券行使等)の罪
7.第163条の2から第163条の5まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
8.第164条から第166条まで(卸璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、(公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第164条第2項、第165条第2項及び第166条第2項の罪の未遂罪
(国民の国外犯)
第3条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
1.第108条(現住建造物等放火)及び第109条第1項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
2.第119条(現住建造物等浸害)の罪
3.第159条から第161条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第5号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第161条の2の罪
4.第167条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第2項の罪の未遂罪
5.第176条から第179条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、未遂罪)、第181条(強制わいせつ等致死傷)及び第184条(重婚)の罪
6.第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
7.第204条(傷害)及び第205条(傷害致死)の罪
8.第214条から第216条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
9.第218条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第219条(遺棄等致死傷)の罪
10.第220条(逮捕及び監禁)及び第221条(逮捕等致死傷)の罪
11.第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、国外移送目的略取等、被略取者収受等、未遂罪)の罪
12.第230条(名誉毀損)の罪
13.第235条から第236条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第238条から第241条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第243条(未遂罪)の罪
14.第246条から第250条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
15.第253条(業務上横領)の罪
16.第256条第2項(盗品譲受け等)の罪
(公務員の国外犯)
第4条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。
1.第101条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪
2.第156条(虚偽公文書作成等)の罪
3.第193条(公務員職権濫用)、第195条第2項(特別公務員暴行陵虐)及び第197条から第197条の4まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第195条第2項の罪に係る第196条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪
(条約による国外犯)
第4条の2 前3項に規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第2編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。
(外国判決の効力)
第5条 外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。
(刑の変更)
第6条 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
(定義)
第7条 この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
2 この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。
第7条の2 この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
(他の法令の罪に対する適用)
第8条 この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。
ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
第2章 刑
(刑の種類)
第9条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
(刑の軽重)
第10条 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。
ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の2倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
2 同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
3 2個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。
(死刑)
第11条 死刑は、監獄内において、絞首して執行する。
2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで監獄に拘置する。
(懲役)
第12条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上15年以下とする。
2 懲役は、監獄に拘置して所定の作業を行わせる。
(禁錮)
第13条 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、1月以上15年以下とする。
2 禁錮は、監獄に拘置する。
(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
第14条 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては20年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては1月未満に下げることができる。
(罰金)
第15条 罰金は、1万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、1万円未満に下げることができる。
(拘留)
第16条 拘留は、1日以上30日未満とし、拘留場に拘置する。
(科料)
第17条 科料は、千円以上1万円未満とする。
(労役場留置)
第18条 罰金を完納することができない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する。
2 科料を完納することができない者は、1日以上30日以下の期間、労役場に留置する。
3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、3年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、60日を超えることができない。
4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
5 罰金については裁判が確定した後30日以内、科料については裁判が確定した後10日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
6 罰金又は科料の言渡しを受けた者がその一部を納付したときは、罰金又は科料の全額と留置の日数との割合に従い、納付した金額に相当する日数を控除して留置する。
7 留置の執行中に罰金又は科料の一部を納付したときは、その金額を、前項の割合で、残りの日数に充てる。
8 留置1日の割合に満たない金額は、納付することができない。
(没収)
第19条 次に掲げる物は、没収することができる。
1.犯罪行為を組成した物
2.犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
3.犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
4.前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
(追徴)
第19条の2 前条第1項第3号又は第4号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。
(没収の制限)
第20条 拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第19条第1項第1号に掲げる物の没収については、この限りでない。
(未決勾留日数の本刑算入)
第21条 未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。
第3章 期間計算
(期間の計算)
第22条 月又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。
(刑期の計算)
第23条 刑期は、裁判が確定した日から起算する。
2 拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。
(受刑等の初日及び釈放)
第24条 受刑の初日は、時間にかかわらず、1日として計算する。
時効期間の初日についても、同様とする。
2 刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。
第4章 刑の執行猶予
(執行猶予)
第25条 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その執行を猶予することができる。
1.前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2.前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
(保護観察)
第25条の2 前条第1項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第2項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2 保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3 保護観察を仮に解除されたときは、前条第2項ただし書及び第26条の2第2号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
(執行猶予の必要的取消し)
第26条 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。
ただし、第3号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第25条第1項第2号に掲げる者であるとき、又は次条第3号に該当するときは、この限りでない。
1.猶予の期間内に更に罪を犯した禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
2.猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
3.猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
(執行猶予の裁量的取消し)
第26条の2 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
1.猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
2.第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
3.猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。
(他の刑の執行猶予の取消し)
第26条の3 前2条の規定により禁錮以上の刑の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。
(猶予期間経過の効果)
第27条 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
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