刑法-2/6

第5章 仮出獄

(仮出獄)
第28条 懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に出獄を許すことができる。
(仮出獄の取消し)
第29条 次に掲げる場合においては、仮出獄の処分を取り消すことができる。
1.仮出獄中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。
2.仮出獄前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。
3.仮出獄前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。
4.仮出獄中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
2 仮出獄の処分を取り消したときは、出獄中の日数は、刑期に算入しない。
(仮出場)
第30条 拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。
2 罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。

第6章 刑の時効及び刑の消滅

(刑の時効)
第31条 刑の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。
(時効の期間)
第32条 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
1.死刑については30年
2.無期の懲役又は禁錮については20年
3.10年以上の有期の懲役又は禁錮については15年
4.3年以上10年未満の懲役又は禁錮については10年
5.3年未満の懲役又は禁錮については5年
6.罰金については3年
7.拘留、科料及び没収については1年
(時効の停止)
第33条 時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。
(時効の中断)
第34条 死刑、懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。
2 罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。
(刑の消滅)
第34条の2 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

第7章 犯罪の不成立及び刑の減免

(正当行為)
第35条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
(正当防衛)
第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
(緊急避難)
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
(故意)
第38条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
(心神喪失及び心神耗弱)
第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
  第40条 削除
(責任年齢)
第41条 14歳に満たない者の行為は、罰しない。
(自首等)
第42条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

第8章 未遂罪

(未遂減免)
第43条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
(未遂罪)
第44条 未遂を罰する場合は、各本条で定める。

第9章 併合罪

(併合罪)
第45条 確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
(併科の制限)
第46条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。
2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。
(有期の懲役及び禁錮の加重)
第47条 併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
(罰金の併科等)
第48条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第46条第1項の場合は、この限りでない。
2 併合罪のうちの2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
(没収の付加)
第49条 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。
2 2個以上の没収は、併科する。
(余罪の処理)
第50条 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。
(併合罪に係る2個以上の刑の執行)
第51条 併合罪について2個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。
2 前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを超えることができない。
(一部に大赦があった場合の措置)
第52条 併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。
(拘留及び科料の併科)
第53条 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第46条の場合は、この限りでない。
2 2個以上の拘留又は科料は、併科する。
(1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合等の処理)
第54条 一個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2 第49条第2項の規定は、前項の場合にも、適用する。
  第55条 削除

第10章 累 犯

(再犯)
第56条 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
2 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。
3 併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。
(再犯加重
) 第57条 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。
  第58条 削除
(三犯以上の累犯)
第59条 3犯以上の者についても、再犯の例による。

第11章 共 犯

(共同正犯)
第60条 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
(教唆)
第61条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
(幇助)
第62条 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
(従犯減軽)
第63条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
(教唆及び幇助の処罰の制限)
第64条 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。
(身分犯の共犯)
第65条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

第12章 酌量減軽

(酌量減軽)
第66条 犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。
(法律上の加減と酌量減軽)
第67条 法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。

第13章 加重減軽の方法

(法律上の減軽の方法)
第68条 法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるときは、次の例による。
1.死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮とする。
2.無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、7年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
3.有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。
4.罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。
5.拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる。
6.科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる。
(法律上の減軽と刑の選択)
第69条 法律上刑を減軽すべき場合において、各本条に2個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽する。
(端数の切捨て)
第70条 懲役、禁錮又は拘留を減軽することにより1日に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。
(酌量減軽の方法)
第71条 酌量減軽をするときも、第68条及び前条の例による。
(加重減軽の順序)
第72条 同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
1.再犯加重
2.法律上の減軽
3.併合罪の加重
4.酌量減軽


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