−あり(ari)−
蟻集まって樹を揺るがす(ありあつまってきをゆるがす) 1.蟻のような弱い虫でも、沢山(たくさん)集まれば木を揺るがすほどの大きな力になる。個々は無力な庶民も、群集になると大きな力になるという喩え。 類:●蟻の塔を組む如し 2.また逆に、無力な蟻が集まって木を揺るがそうとしてもできることではないと解釈して、身分不相応の大望を抱くことの喩えとしても使う。
有り難い(ありがたい) 存在することが難しいの意味。 1.存在が稀(まれ)である。なかなか有りそうにない。滅多にない。珍しい。 用例:枕草子−七五「ありがたきもの、舅にほめらるる婿」 2.世に生きることが難しい。存在し難(にく)い。生き長らえ難い。 用例:源氏−東屋「世の中は、ありがたく、むつかしげなる物かな」 3.世にも珍しいほど優れている。非常に立派である。 用例:宇津保−吹上・上「いとありがたき君と聞き奉るぞ」 4.滅多にないことで、またとなく尊(とうと)い。 類:●勿体ない●畏(おそ)れ多い 用例:二度本金葉−681「ありがたき法をひろめし聖にぞ」 5.人の好意などに出会って、滅多にないことと感謝したい気持ちである。喜ばしく思う。身に染みて嬉しい。 類:●忝(かたじけな)い●有難う 用例:人情・春色梅児誉美−四「御隠居さまの有がたい思召」 6.良い状態であり、幸運である。恵まれている。 例:「有り難いことに健康そのものです」
在り来たり(ありきたり) 1.元からあること。今まで通りである。 類:●在来 2.転じて、有り触れていること。 類:●陳腐●月並み  例:「在り来たりの発想」
在りし日(ありしひ) 1.過ぎ去った日々。昔。2.死んだ人が、まだ生きていた頃。 類:●生前
在りし世(ありしよ) 過ぎ去った昔。特に、栄えていた昔の時世。または、生前。 類:●在りし昔
有り付く(ありつく) 1.職・金銭・食べ物など、求めていたものがやっと手に入る。また、偶然手にする。 例:「ご馳走に有り付く」 2.ものごとに慣れる。生活に慣れる。 用例:源氏−蓬生「さるかたにありつきたりしあなたの年ごろ」 3.住み付く。安住する。そこに長く住む。 用例:今昔−10「国に大水出で、人を流し里を失ふ。然れば、民ありつく事難し」 4.あることが、自分の考えや趣味と一致する。似合う。また、納得する。 類:●板に付く 用例:源氏−総角「けさうだちたることは、いとまばゆく、ありつかず」 ★下に否定語を伴うことが多い<国語大辞典(小)> 5.落ち着く。 用例:狭衣−一「あらぬ所に渡りて、ありつかず、花々ともてかしづかれ給ふ有様」
蟻の穴から堤も崩れる(ありのあなからつつみもくずれる)[=より堤の崩れ] 堅固に作った堤防も蟻が開けた小さな穴が原因となって崩れ去ることもある。ほんの僅(わず)かな油断や不注意が元で、大惨事を招くことがある。 類:●蟻の一穴●千里の堤も蟻の穴から●小事は大事●It is the last straw that breaks the camel's back.(最後の藁一本が駱駝の背を折る) 出典:「韓非子−喩老」「千丈之堤、以螻蟻之穴潰」
蟻の甘きに付くが如し(ありのあまきにつくがごとし) 利益のあるところに、人が群がり集まること。
蟻の一穴(ありのいっけつ) ちょっとしたことが原因で大変なことになる。
蟻の思いも天に届く(ありのおもいもてんにとどく)[=昇る] 小さな力しか持たない者でも、一念が強ければ願い通りになるものだ。 類:●一念岩をも徹す
蟻の熊野参り(ありのこまのまいり)[=伊勢参り・百度参り・堂参り・物参り] 蟻が列をなして続くのを熊野参りの人の列に喩えたもの。転じて、大人数が列をなして、ぞろぞろと行くこと。
蟻の丈(ありのたけ) どれもこれも平凡で代わり映えがしないこと。特に、抜きん出た者がないことの喩え。 類:●一寸法師の背比べ●団栗の背比べ
蟻の門渡り(ありのとわたり) 人がぞろぞろと列をなして行く様子を、蟻が一列に並んで行く様子に喩えた言葉。また、人が一列でなければ歩けないような、両側が深い谷間の尾根道などのことも言う。 類:●蟻渡り●蟻の熊野参り
蟻の這い出る隙もない(ありのはいでるすきもない) 小さな蟻でさえ逃げ出す隙間がないという意味で、厳しく四方八方を固められて、出る隙間がない警備状態の喩え。 類:●水も漏らさぬ
ありやなしや 1.生きているかいないか分からない。無事でいるかどうか分からない。 用例:伊勢−九「わが思ふ人はありやなしや」 2.本当であるかないか分からない。 類:●実否 用例:源氏−浮舟「ありやなしやをきかぬまは」 3.存在するかしないか分からない。 用例:雑俳・柳多留−三「気はありやなしやとすびく角田川」 4.あるかないかはっきりしないくらい目立たない。 例:「ありやなしやの髭」