−とん(ton)−
・頓狂声(とんきょうごえ) 出し抜けに発する調子外れな声。間の抜けた声。
・団栗の背競べ(どんぐりのせいくらべ) 団栗の大きさはどれもほとんど同じで、背競べをしても甲乙の判定を附け難い。どれもこれも平凡で代わり映えがしないこと。特に、抜きん出た者がないことの喩え。 類:●一寸法師の背比べ●蟻の丈
・豚犬(とんけん) 豚と犬のこと。 1.愚かで役に立たない人。人並みまで達していないこと。2.自分の子供を他人に対して遜(へりくだ)って言う語。 類:●愚息(ぐそく)●豚児
・頓死(とんし・とんじ) 1.急に死ぬこと。あっけなく死ぬこと。急死。2.将棋で、自分の王将の詰みをうっかり見逃し、他の手を指した瞬間、相手に詰まれること。
・豚児(とんじ) 1.豚の子。2.自分の息子を謙遜していう言葉。 類:●豚犬
・遁辞は其の窮する所を知る(とんじはそのきゅうするところをしる) 言い逃れをしている者を見ると、考えに行き詰まっているのだということが分かる。 出典:「孟子−公孫丑・上」「[言+皮]辞知其所蔽、淫辞知其所陥、邪辞知其所離、遁辞知其所窮」
・頓着ない(とんじゃくない・とんちゃくない) 気に掛けない。構わない。 類:●無頓着 ★「とんじゃく(貪着)」と同源<国語大辞典(小)> 参考:貪着(とんじゃく) 仏経用語。貪(むさぼ)り、執着すること。飽くことなく、物事に囚われること。
・頓首(とんしゅ・とんじゅ) 1.昔の中国の礼式で周礼(しゅらい)九拝の一つ。頭を地に付くように下げて、恭(うやうや)しくする敬礼。2.手紙や上表文の終わりに付け、相手に対して敬意を示す言葉。 例:「草々頓首」
・呑舟の魚(どんしゅうのうお) 1.舟を丸呑みにするほどの大きな魚。2.転じて、善悪共に、大人物・大物の喩え。 出典:「荘子−庚桑楚」
・呑舟の魚枝流に游がず(どんしゅうのうおしりゅうにおよがず) 舟を呑むほどの大魚は小さな川には棲(す)まないという意味から転じて、大人物はつまらない者とは交わったりしないということ。また、大人物は高遠な志望を抱いて、小事に拘(こだわ)らないということの喩え。 出典:「列子−楊朱」「呑舟之魚、不游枝流、鴻鵠高飛、不集汚池」
・とんずら 俗語。逃げることを意味する。特に、犯罪を犯した者が逃げることに言う。 類:●高飛びする 例:「集金袋を持ったままとんずらした」 ★「遁走」の「遁」と「ずらかる」の合成語から。
・とんだ 1.思い掛けないこと。普通一般と懸け離れて変わっていること。主に、呆(あき)れたり、吃驚(びっくり)したりする気持ちを込めて用いる。 類:●とんでもない 用例:浄・神霊矢口渡−四「ヤレヤレヤレとんだ男が有る物だ」 2.逆説的な使い方で、素晴らしいこと。 用例:滑・浮世風呂−二「とんだ人相よしで能(いい)お子だ」
・とんだ茶釜(とんだちゃがま) 思いも掛けない大変良いものごと。 ★江戸、谷中笠森の茶屋女お仙の美しさを見て言い出された流行語。また、お仙がいなくなった後、その茶屋に親爺(おやじ)が店番していたところから「とんだ茶釜が薬鑵に化けた」ともいわれ、とんでもないことの意にも用いられた<国語大辞典(小)>
・頓痴気(とんちき) ぼんやりしていて、気が利かないこと。また、その人を罵って言う言葉。 類:●鈍間(のろま)●頓馬●間抜け ★「頓痴気」と当てるが、「とん」は「とんま」の「とん」、「ちき」は「いんちき」などの「ちき」に同じものか。「ちき」は、「てき(的)」の変化か<国語大辞典(小)> ★擬人名「頓吉(とんきち)」の転<広辞苑第四版(岩)> ★「頓痴気」は、借字<新明解国語辞典(三)>
・どんちゃん騒ぎ(どんちゃんさわぎ) 「どんちゃん」は、三味線や太鼓などの鳴り物を入れてする遊興のこと。酒を飲み、歌い、鳴物入りで賑(にぎ)やかに遊興すること。また、その騒ぎ。
・頓珍漢(とんちんかん) 1.ものごとが行き違って訳が分からなくなること。 例:「頓珍漢な答え」 2.間の抜けた言動をすること。また、その人。 例:「頓珍漢な奴だな」 ★「頓珍漢」は当て字。鍛冶屋の相槌(あいづち)を打つ音が交互してそろわないさまから<国語大辞典(小)>
・飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし) 自らを滅ぼすような禍(わざわい)の中に進んで身を投ずること。みすみす敵の餌食(えじき)になること。 類:●自滅●宵の虫の明燭に赴くが猶し 出典:「菜根譚−後集七十」「而飛蛾独投夜燭」
・とんでもない 1.途方もない。思いも掛けない。常識では考えられない。2.以ての外(ほか)である。けしからん。 類:●言語道断●怪しからん 用例:浄・用明天皇職人鑑−四「ハテ風をつかまへる様な、とんでもない問ひ様かな」 3.相手の言葉に対する強い否定を表わす。そのようなことはない。冗談ではない。 類:●滅相もない 例:「とんでもないといった顔付き」 ★「とでもない」の変化<国語大辞典(小)> ★「途でもない」からの転という。「正しい道ではない」の意味か。 ★「ない」は接尾語。「とんでもありません」「とんでもございません」などは、誤用。
・とんでもはっぷん 俗語。「never happen」を日本語風に言い換えたもの。とんでもない。真逆(まさか)。 ★米国進駐軍の片言日本語から出たものか。昭和26年(1951)の映画『自由学校』(獅子文六原作・1950)内の台詞で一般化したものらしい。 ★「飛んでも八分歩いて十分(じっぷん)」などと洒落(しゃれ)ても言った。
・どんでん返し(どんでんがえし) 1.歌舞伎の大道具「強盗(がんどう)返し」のこと。 ★「強盗(がんどう)返し」は、「強盗提灯(がんどうちょうちん)」の蝋燭(ろうそく)や反射板が自由に回転するところから付いた名前。 ★「強盗返し」がひっくり返るとき、大太鼓が「どんでんどんでん」と打ち鳴らされたことによる。 2.まったく正反対にひっくり返すこと。また、そのような仕掛け。3.特に、小説や劇の筋や人物関係がまったく逆転すること。一般に、ものごとががらりと一変すること。 例:「どんでん返しの結末が待っている」
・とんとん 〔俗語〕 損得や優劣などについて、二つのものの差がほとんどなく、ちょうど同じぐらいである。特に、収支に差のないときにいう。 類:●五分五分 例:「収支がとんとんになる」
・とんとん拍子(とんとんびょうし) ものごとが滞(とどこお)りなくすいすい進むこと。 用例:人情・閑情末摘花−初「イヤハヤ呆れ切幕トントン拍子(ヒャウシ)だ」
・どんぴしゃり・どんぴしゃ 1.予想などが、少しの違いもなく的中し、その通りであること。 例:「見積もった額にどんぴしゃりだった」 2.ぴったり合うこと。 例:「バス停にどんぴしゃりで着いた」
・鳶に油揚を攫われる(とんびにあぶらあげをさらわれる) 当然自分のものになると思っていたものを、不意に横から奪われること。 類:●鳶(とび)に油揚げを攫われる
・丼勘定(どんぶりかんじょう) 大まかに金の出し入れをすること。また、無計画に金銭を使うこと。 ★「丼」は、職人などの腹掛けの前部に付けた共布(ともぎれ)の大きな物入れのこと。職人などが、丼の中に金を入れて、無造作に出し入れして使ったところから言われる。
・蜻蛉返り(とんぼがえり) 蜻蛉が、飛びながら急に後ろへ身を翻(ひるがえ)す様子から。 1.空中で身体を回転させること。また、両手・両足を開いて、身体を車輪のように横へ回転させること。 類:●宙返り 2.ある場所へ行って、直ぐ引き返してくること。すぐ戻ってくること。 例:「その日のうちに蜻蛉返りする」 3.歌舞伎で、切られたり投げられたりした役者が宙返りをすること。
・蜻蛉を切る(とんぼをきる) 歌舞伎の殺陣(たて)の演技で、空中で蜻蛉返りをする。
・頓馬(とんま) 1.間抜けであること。また、その人。 類:●とんちき 用例:滑・七偏人−四「あんな鈍間(トンマ)はねへ」 2.しくじり。失敗。 例:「頓馬をやらかす」 ★「とん」は「とんちき」の「とん」、「ま」は「のろま」の「ま」<大辞林(三)> ★「とん」は、「とんだ・とんと」の意。「ま」は、「のろま・まぬけ」の意か。「頓馬」は、借字<新明解国語辞典(三)> ★「鈍間(のろま)」の「鈍」を、「頓」と読み違えたものか。
・問屋が卸さない(とんやがおろさない) そう都合の良いようにばかりはいかない。 例:「そうは問屋が卸さないよ」 ★江戸時代末期、卸売りの値は問屋が決めており、こちらの望む値では商品を卸してくれないことから。