−あき(aki)−
飽きが来る(あきがくる) だんだん嫌になる。興味がなくなってくる。
秋風が立つ(あきがたつ) 男女間の愛情が薄らいできたということ。嫌気(いやけ)が差す。 類:●秋を吹かす●熱が冷める ★「秋」を「飽き」にかけて<国語大辞典(小)>
秋鯖は嫁に食わすな(あきさばはよめにくわすな) ⇒秋茄子は嫁に食わすな
空き店の恵比寿様(あきだなのえびすさま) 「空き店」は、人が住んでいない家のこと。相手もいないのに一人で悦に入(い)っている人。また、誰もいない所に一人で居座り、頑張っている人。
空き樽は音が高い(あきだるはおとがたかい) 空の樽は叩くと高い音を立てる。同様に、軽薄な者ほど、滔々(とうとう)と知識をひけらかすものである。 類:●浅瀬に徒波●転(こ)け徳利(どっくり)●The worst wheel always creaks most.
商い三年(あきないさんねん) 1.商売は、始めてから少なくとも三年くらい経たなければ軌道に乗らず、利益を出すことができないものである。 類:●売り出し三年 2.ものごとはすぐに上手くゆくものではなく、暫くの間は我慢しなさいということ。 類:●首振り三年●ぽつぽつ三年波八年●櫓三年に棹八年
商いは牛の涎(あきないはうしのよだれ) 商売をするのなら、牛の涎が細く長く垂れるように、気長に辛抱しなさいという教訓。儲けを急ぎ過ぎるなということ。
商いは数でこなせ(あきないはかずでこなせ) 商売は薄利多売(はくりたばい)が本道であるということ。利益は少なくして、たくさんの数を売るのがこつだという教え。
商いは門門(あきないはかどかど) 商売はそれぞれの客を見て、それぞれに応じた品物を売るのが、肝心であるということ。
商いは草の種(あきないはくさのたね) 商売というものは、草の種ほど種類が多いということ。
秋茄子は嫁に食わすな(あきなすはよめにくわすな・あきなすびは〜) 1.秋茄子は味が良いから嫁には食べさせるなのという意味で、姑の嫁いびりとするのが一般的な通説。2.逆に「秋茄子は体を冷やす」、「秋茄子は種子が少ないから子種が少なくなる」などという理由で、嫁に食わすなと解釈する説もある。 ★江戸時代中期の伊勢貞丈という礼法指南役も、その著書『安斎随筆』のなかで、「子宮を痛めるから、秋茄子は嫁の身体に良くない」といっている<雑学庫[知泉]> 参考文献:安斎随筆(あんざいずいひつ) 随筆集。伊勢貞丈(さだたけ)号は安斎。1770〜1783頃か。32巻。有職故実、漢字の訓読みの正誤など、制度文物一般について考証したもの。 ★「嫁」は「嫁が君」つまり「鼠(ねずみ)」のこととする説もある。 参考:夫木和歌抄「秋なすび わささの粕につきまぜて よめにはくれじ 棚におくとも」
・秋の扇(あきのおおぎ)
秋の鹿は笛に寄る(あきのしかはふえによる)[=心を乱す] 秋季、牝鹿は、鹿笛の音を牡鹿の鳴き声と勘違いして思い煩(わずら)う。転じて、自ら危険な状態に身を投じること。 類:●笛に寄る秋の鹿は儚い契りに命を失う
秋の日は釣瓶落とし(あきのひはつるべおとし)
秋の夜と男の心は七度変わる(あきのよるとおとこのこころはななたびかわる) 男の愛情は変わり易い。 類:●男心と秋の空
秋葉山から火事(あきばさんからかじ) 防火の守り神として知られる秋葉山が火事になることもある。人を戒(いまし)め諭(さと)す立場の者が、自(みずか)その罪を犯すことの喩え。 類:●火消しの家から火事 ★「秋葉山」は、静岡県周智郡(しゅうちぐん=天竜川東岸)秋葉(あきは)山頂にある秋葉神社のこと。江戸時代から、防火の神として知られる。 ★「あきばさん」と濁(にご)るのは、江戸で言われた諺だから。
明き盲(あきめくら) 1.一見見えているようで、実は見えない目。また、その人。2.文字を読めない人。学のない人。文盲(もんもう)。3.見えていても物の存在や本質に気付かない人。転じて、ぼんやり者。
空き家で声嗄らす(あきやでこえからす)[=棒を振る] 無駄骨を折る。労しても功がない。 類:●縁の下の舞●縁の下の掃除番 ★人の住んでいない家で、案内を求めても返事がないというところから<国語大辞典(小)>
空き家の雪隠(あきやのせっちん) 肥え(=声)がないという洒落(しゃれ)で、応答がないことの喩え。
諦めは心の養生(あきらめはこころのようじょう) 失敗や不運はいつまで悔やんでいても仕方がない。くよくよするくらいなら、割り切って諦めてしまった方が精神衛生に良いということ。 類:●諦めが肝心●恨み心は我を削る 反:■杞憂
呆れが宙返りをする(あきれがちゅうがえりをする) 酷(ひど)く呆れ返る。 類:●呆れが礼に来る 用例:洒・辰巳婦言「何のこつた、あきれが宙返りをして、葺屋町川岸へ軽わざを出さア」
呆れが礼に来る(あきれがれいにくる)[=お礼] 呆れ返って、その上お釣りがくる。酷(ひど)く呆れる。 ★「呆れ」を擬人化した言い方。
アキレス腱(あきれすけん) 強力な者が持っている一か所の弱点。 類:●弱点 ★ ギリシア神話の英雄アキレウスに由来する名。母親のテティスは生まれたばかりのアキレスを、冥府のステュクス川に浸(ひた)して不死の体にしようとしたが、手で掴んでいたため両足首だけは浸(つ)かっていなかった。アキレスは後のトロイア戦争で、パリス王子にその弱点を矢で射抜かれ命を落としたとされる。
呆れもしない(あきれもしない)[=せぬ] 酷く呆れて言いようもない。 用例:雲形本狂言・鐘の音「あきれもせぬ事ぢゃ」 参考:雲形本狂言(くもがたぼんきょうげん) 文政末(1827−9)頃、山脇和泉元業(もとなり)書写になる、和泉流の古本(こほん)<太郎冠者> 用例の出典:鐘の音(かねのね) 狂言。各流。鎌倉で「かね(金)のね(値)」を聞いて来いと主に命じられた太郎冠者は、「鐘の音」と勘違いして、寺々の鐘の音を聞いて回り、帰って主に報告して叱られる。
秋を吹かす(あきをふかす) 男女間の愛情が、冷めてきたことの喩え。 類:●秋風が立つ(吹く)●熱が冷める ★「秋」を「飽き」に掛けたもの。
商人と屏風は曲がらねば世に立たず(あきんどとびょうぶはまがらねばよにたたず)[=直(す)ぐに立たぬ] 屏風は折り曲げないと倒れてしまうように、商人も自分の感情を抑えて客の意向を汲(く)まなければ成功しないということ。 類:●人と屏風は曲がらねば世に立たず●曲がらねば世が渡られぬ ★「あきんど」は、秋にやってくる人の秋人(あきびと)からの転。「商」の字を当てたのは、古代中国の殷(商)の都(大邑商)の人々が商売上手で、よく成功を収めたことによる。
商人に系図なし(あきんどにけいずなし) 商人の出世は、家柄によるものではなく、その手腕によるものだということ。
商人の空誓文(あきんどのからせいもん・そらせいもん) 商人の言動には駆け引きが多いから、信用し難(がた)いということ。
商人の元値(あきんどのもとね) 商人の言う元値(=原価)は、どこまで本当なのかあてにならないということ。
商人は牛の涎(あきんどはうしのよだれ) 商人は利益は細くても、牛の涎のように、永続きすることを図るべきだということ。儲けを急ぎ過ぎるなということ。 類:●商いは牛の涎
商人は木の葉も錦に飾る(あきんどはこのはもにしきにかざる) つまらない品物でも、立派なもののように思わせて、客に高く売り付けるのが商人の手腕であるということ。
商人は腹を売り、客は下より這う(あきんどははらをうり、きゃくはしたよりはう) 商人は、まず掛け値を言って次第に値引きして売り、客は初め安い値を言って徐々に値を上げていって買うのが習わしである。
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